簿記論と財務諸表論どっちから勉強したらいいの?
税理士を目指すとき誰もが疑問に思います。
この記事では、「簿記論と財務諸表論どちらから勉強すべきか」について解説します。
なお、税理士試験では市販の参考書のみの、いわゆる「独学」はおすすめできません。詳しい理由は下の記事を参考にして下さい。
まず、「簿財」についてザックリ解説します。
簿財のことはよく知ってる人はコチラからジャンプして下さい。
簿財をザックリ解説
簿財(ぼざい)とは、税理士試験の受験科目「簿記論」「財務諸表論」の略です。
ちなみに、税理士試験の実施は毎年8月上旬です(国税庁HP)。
簿財の特徴をまとめると以下のとおり。
- 簿財は受験資格ナシ&必須科目
- 簿財は合格率が高い
- 簿財はライバルが弱い
- 簿記の計算問題が全体の75%
- 簿財だけでも転職に有利
①簿財は受験資格ナシ&必須科目
税理士試験の11科目のうち受験資格が無く、誰でも受験可能なのは「簿記論」と「財務諸表論」だけ。
しかも、簿財はどちらも必須科目になっています。つまり、簿財に合格しないと税理士にないということです。
全11科目をまとめると次のとおりです。
1 | 簿記論 | どちらも必須科目 | 会計科目(受験資格なし) |
2 | 財務諸表論 | ||
3 | 法人税法 | どちらか1科目必須 | 税法科目(受験資格が必要) |
4 | 所得税法 | ||
5 | 相続税法 | 選択科目 | |
6 | 消費税法 | ||
7 | 酒税法 | ||
8 | 国税徴収法 | ||
9 | 住民税 | ||
10 | 事業税 | ||
11 | 固定資産税 |
「税法科目の受験資格の取得方法」については、こちらの記事「高卒・理系卒が税理士試験の受験資格を取得する方法」で詳しく解説しています。
②簿財は合格率が高い
簿財は他の9科目(税法科目)に比べて合格率が高いです。
令和5年(2023年)に実施された税理士試験の合格率は、簿記論が17.4%、財務諸表論が28.1%でした。
それに対して、他の9科目(税法科目)の平均合格率は13.0%。
このように、簿財は全11科目の中でも合格率が高いことが分かります。
受験者数(人) | 合格者数(人) | 2023年合格率(%) | 受験者数占有率(%) | |
簿記論 | 16,093 | 2,794 | 17.4 | 34.3 |
財務諸表論 | 13,260 | 3,726 | 28.1 | 28.2 |
所得税法 | 1,202 | 166 | 13.8 | 2.6 |
法人税法 | 3,550 | 497 | 14.0 | 7.6 |
相続税法 | 2,428 | 282 | 11.6 | 5.2 |
消費税法 | 6,756 | 802 | 11.9 | 14.4 |
酒税法 | 463 | 59 | 12.7 | 1.0 |
国税徴収法 | 1,646 | 228 | 13.9 | 3.5 |
住民税 | 462 | 68 | 14.7 | 1.0 |
事業税 | 250 | 41 | 16.4 | 0.5 |
固定資産税 | 846 | 146 | 17.3 | 1.8 |
合計(延人員) | 46,956 | 8,809 | 18.8 | 100 |
(出典:国税庁HP)
また、下のグラフは過去15年間の合格率推移(11科目全体、簿記論、財務諸表論)です。
これを見ると、財務諸表論の合格率の高さが際立っています。
③簿財はライバルが弱い
税理士試験は得点の上位者が合格する「競争試験」。そのため、ライバルの強さが合否に大きく影響します。
簿財は他の9科目(税法科目)に比べてライバルが弱いと言われています。
一番の理由は、「簿財は受験資格が無く、誰でも受験できる」という点です。
簿財は誰でも受験できるため、とりあえず受験してみたという「記念受験」の人も多く、ライバル全体のレベルは低いと言っていいです。
一方、簿財以外の9科目(税法科目)は、「日商簿記1級」「大学で特定の科目を履修している」「会計事務所等で2年以上実務経験がある」といった、受験資格が必要なので、ライバルのレベルも当然高くなります。
さらに、簿財以外の9科目(税法科目)を受験している人の多くは、簿財を突破してきた「強者」ばかりです。
競争試験である税理士試験において、ライバルが弱い簿財は他の9科目より合格しやすいです。
④簿記の計算問題が全体の75%
簿財全体で出題される問題の75%が「簿記の計算問題」です。
簿記論は、簿記の計算問題が100%。
財務諸表論は、簿記の計算問題50%、理論問題50%で構成されています。
したがって、簿財全体で出題される問題の75%は簿記の計算問題ということになります。
⑤簿財だけでも転職に有利
受験からは少しズレますが、簿財だけでも転職に有利という特徴があります。
簿財は税理士試験の一部に過ぎませんが、転職市場では高く評価されます。簿財は日商簿記1級と同等かそれ以上、と考えて頂くとイメージしやすいと思います。
また、会計事務所だけではなく、企業の経理職への転職でも絶大な力を発揮します。
実際に僕の友人も、30代前半で簿財に合格し、超有名メーカーの経理に転職しました。
簿財どっちから勉強するかの「判断表」
簿財どちらから勉強するかは、現在の「簿記知識」と「試験までの期間」によって変わります。
大きく分けると次の6ケースがあります。
試験まで 3か月未満 |
試験まで 3か月以上~6か月未満 |
試験まで 7か月以上 |
|
簿記知識なし | ①簿記論 | ②簿記論 | ③簿財同時 |
簿記知識あり (日商3級以上) |
④簿記論 | ⑤簿財同時 | ⑥簿財同時 |
ちなみに、税理士試験の実施は毎年8月上旬です(国税庁HP)。
①簿記知識なし・試験まで3か月未満
簿記知識なしで、試験まで3か月未満という場合、暗記が必要となる理論問題がない「簿記論に絞る」べきです。
この状況なら、次の試験で合格というより、次々回の試験で簿財2科目合格することが目標になります。
とは言え、試験は何が起こるか分かりません。試験当日まで全力を尽くすことが大切です。
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今から試験当日までにやるべきことは次の通りです。
- 簿記3級レベルの知識を2週間程度で習得。
- 税理士講座(通信講座)を1.5~2.0倍速で一気に視聴。
- 基礎問題・過去問題をできる限り解く。
まずは、日商簿記3級レベルの知識をマスターしましょう。なぜなら、どこの税理士講座も「日商簿記3級以上の知識」があることを前提として作られているからです。
日商簿記3級は市販のテキストでも学習できます。
しかし、より早く確実にマスターするためには、税理士講座に付属している「簿記入門コース」がおおすめです。
あくまでも簿記3級レベルの知識を得ることが目的なので、簿記検定に受かる必要はありません。
税理士講座の簿記入門コースは、税理士講座を理解できるレベルに持っていくことを目的として作られているため、無駄な学習が一切ないのがメリットです。
簿記入門コースが終わり、簿記3級レベルの知識がマスターできたら、税理士講座を倍速再生で一気に視聴しましょう。
そして、税理士講座の視聴が終わったら、試験まで「基礎問題」「過去問題」「通信講座から提供される実力テスト」をひたすら繰り返しやるだけです。
基礎的な問題を確実に合わせれば、簿記論に合格する可能性はあります!
今すぐ行動に移せば、「え!マジで受かっちゃったよ!」ていう未来が数か月後に訪れるかもしれません。
より具体的な方法については下の記事を参考にして下さい。
②簿記知識なし・試験まで3か月以上~6か月未満
簿記知識なしで、試験まで3か月以上~6か月未満という場合、暗記が必要となる理論問題がない「簿記論に絞る」べきです。
この状況の場合、簿記論のみなら次の試験で合格する可能性があります。しかし、基本的には次々回の試験で簿財2科目合格することが目標になります。
しかし、試験は番狂わせも多く、特に簿記論は成績が悪かった人が合格するケースを僕もたくさん見ました。
今から試験当日までにやるべきことは、「①簿記知識なし・試験まで3か月未満」のケースと同じです。
確かに試験までの期間は短いですが、諦めなければワンチャンあります。
今すぐ行動に移せば、今年の11月に合格通知を手にして大喜びしているあなたがいるかもしれません。
より具体的な方法については下の記事を参考にして下さい。
③簿記知識なし・試験まで7か月以上
簿記知識なしで、試験まで7か月以上ある場合、「簿財同時に勉強」がおすすめです。
簿財で出題される問題全体の75%は「簿記の計算問題」。
なので、簿財は同時に勉強するのが一番良いと個人的には思っています。
人気の通信講座を見ても、「スタディング 税理士講座」「クレアール税理士講座」は簿財を1科目とみなしたカリキュラム設計にしています。
試験まで7か月以上あれば、1科目ないし2科目合格は十分可能です。
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- 基礎問題・過去問題をできる限り解く。
試験までにやるべきこは、基本的には「①簿記知識ゼロ・試験まで3か月未満」「②簿記知識ゼロ・試験まで3か月以上~6か月未満」のケースと同じです。
ただ、試簿記知識ゼロ、試験まで7か月以上ある場合は、試験1ヵ月前くらいで「財務諸表論1科目に絞る」という最終手段もあります。
勉強の進捗には個人差があります。簿財2科目分の勉強量を消化できないケースも考えられます。
ですので、場合にはによっては試験の直前で財務諸表論に絞り、1科目を確実に取りに行くという戦略を使います。
なぜ、簿記論ではなく財務諸表論に絞るかというと、財務諸表論の勉強に「簿記の計算」が含まれているからです。
財務諸表論のカリキュラムで勉強する簿記の計算がしっかりとマスターできれば、簿記論に合格する可能性は十分あります。
また、財務諸表論で出題される「理論問題」は、暗記を要するためインプット学習に非常に時間がかかります。
暗記が必要な財務諸表論を先に合格しておくと、翌年以降が楽になになるというメリットもあります。
最後に、合格率が非常に高いというのも財務諸表論に絞る理由です。
しかし、財務諸表論に絞るという選択はあくまでも最終手段。
試験まで7か月以上あるなら、ぜひ簿財2科目合格を目指して勉強すべきです!
より具体的な方法については下の記事を参考にして下さい。
④簿記知識あり・試験まで3か月未満
日商簿記3級以上の簿記知識があり、試験まで3か月未満の場合は、「簿記論に絞る」べきです。
暗記が必要となる「理論問題」がある財務諸表論は避けた方が無難です。暗記はインプットにとても時間がかかるからです。
簿記の基礎知識があるなら、今から本気で勉強すれば簿記論に合格できるかもしれません。
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今から試験当日までにやるべきことは次の通りです。
- 税理士講座(通信講座)を1.5~2.0倍速で一気に視聴。
- 基礎問題・過去問題をできる限り解く。
試験まで3か月を切っているなら、税理士講座のカリキュラムをほぼ全て視聴できます。
ですので、今すぐ税理士講座を一気に最後まで見ましょう。「スタディング 税理士講座」なら、講義の再生速度をMAXで「3.0倍速」まで上げられるので大きく時間短縮できます。
講義の視聴が終わったら、「基礎問題」「過去問題」「通信講座から提供される実力テスト」をひたすら繰り返すだけです。
とてもシンプルですが、やることはこれだけです。合格者はこれしかやってません。
そして、試験本番では、難しい問題には手を出さず、簡単な問題を確実に合わせることに徹底すれば合格できる可能性はあります。
もう時間がありません。「やる!」と決めたら今すぐ行動しましょう。
今すぐ動けば、11月に合格通知を手にしているかもしれません!
より具体的な方法については下の記事を参考にして下さい。
⑤簿記知識あり・試験まで3か月以上~6か月未満
日商簿記3級以上の簿記が知識あり、試験まで3か月以上~6か月未満の場合、「簿財同時に勉強」がおすすめです。
メチャクチャ頑張れば今年の試験で簿財2科目合格もあり得ます。
今から試験当日までにやるべきことは次の通りです。
- 税理士講座(通信講座)を1.5~2.0倍速で一気に視聴。
- 基礎問題・過去問題をできる限り解く。
日商簿記3級以上の知識があれば、今すぐに税理士講座を視聴しても内容を理解できます。
なので、税理士講座を一気に最後まで視聴して全体を把握しましょう。
税理士講座の視聴が終わったら、「基礎問題」「過去問題」「通信講座から提供される実力テスト」を繰り返し解きましょう。
「税理士試験は難しい」というイメージが強いです。しかし、先述したように簿財に関して言えば「記念受験者」も多く、真面目に頑張れば十分合格できる試験です。
とは言え、試験まで半年を切っていますので、勉強不足で2科目分のカリキュラムをこなすのが難しい場合もあるでしょう。
その場合は、「財務諸表論」に絞って勉強しましょう。
財務諸表論の勉強には「簿記の計算」が含まれているので、途中で財務諸表論に絞って勉強しても、本番で簿記論に合格できる可能性があるからです。
実際に、僕は1年間簿記論の勉強を全くしないで合格しました。詳しくは下の記事で。
今すぐ行動に移せば、11月には簿財2科目に合格したあなたがいるかもしれません。
もし、2科目に合格できたら見える世界が間違いなく変わります!
より具体的な方法については下の記事を参考にして下さい。
⑥簿記知識あり・試験まで7か月以上
日商簿記3級以上の簿記が知識あり、試験まで7か月以上ある場合、「簿財同時に勉強」がおすすめです。
簿財で出題される問題全体の75%は「簿記の計算問題」。
なので、簿財は同時に勉強するのが一番効率的です。
人気の通信講座「スタディング 税理士講座」「クレアール税理士講座」を見ると、簿財を1科目とみなしたカリキュラム設計にしています。
試験まで7か月以上あれば、1科目ないし2科目合格も十分可能です。
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- 税理士講座(通信講座)を1.5~2.0倍速で一気に視聴。
- 基礎問題・過去問題をできる限り解く。
日商簿記3級以上の知識があれば、今すぐ税理士講座を受講しても内容を理解できます。
そして、講義は倍速再生で一気に視聴する。
「スタディング 税理士講座」ならスマホでの学習なので、通勤時間や病院の待ち時間など、スキマ時間もフル活用できます。
2019年のデータになりますが、スマホの平均利用時間は「1日3時間46分」だそうです。
1年に換算すると「1,374時間」もあります。
出典:ニールセン
スマホでポチポチやってる時間を勉強に回せば、簿財合格も夢ではありません。
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スキマ時間を利用して講義を一気に視聴したら、「基礎問題」「過去問題」「通信講座から提供される実力テスト」をひたすら繰り返し解きましょう。
とてもシンプルですが、合格者がやっていることはこれだけです。
それから、もし試験直前1か月前くらいで、2科目分の勉強を消化しきれない状況になったら「財務諸表論に絞って」勉強するのも有りです。
財務諸表論の勉強には「簿記の計算」も含まれているため、最後の1か月簿記論の勉強をしなくても合格できるかもしれません。
実際に、僕は1年間簿記論の勉強を全くしないで合格しました。詳しくは下の記事で。
また、最近の税理士試験の結果を見ると、財務諸表論の合格率が高く、受かりやすいことも財務諸表論に絞る理由の一つです。
7か月以上勉強して合格ゼロは、まあまあダメージが残ります。1科目は必ず受かりたいですよね。
また、暗記が必要な財務諸表論を先に突破することで、来年以降が楽になるというメリットもあります。
簿記が知識あり、試験まで7か月以上あるケースはとても有利な状況といえます。
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